製品が熱くなったら何をすべきか―ヒートシンク設計で学ぶ熱マネジメントの基本
前回、「そもそも熱とは何か」というテーマで伝熱の基礎を紹介した。今回はより具体的な事例として、電子機器に使われるヒートシンクの設計を取り上げ、「製品の発熱問題にどう向き合うか」を説明したい。
■ ヒートシンクとは何か
ヒートシンクとは、半導体素子などの発熱部品から熱を逃がすための放熱部品である。アルミや銅などの熱伝導率の高い金属でできており、フィン(薄い板状の突起)を並べた構造が一般的だ。パソコンのCPUクーラーや、インバーター・電源装置の基板上で見かけることが多い。
その役割はシンプルで、「発熱した素子の熱を、できるだけ効率よく空気中に逃がすこと」である。
■ 問題の設定―発熱量が2倍になったとき
ここで一つの事例を考えてみよう。
冷却対象の半導体素子が、性能アップによって発熱量が100Wから200Wへと2倍になったとする。このとき、素子の温度を従来と同じ水準に保つためには、ヒートシンクの冷却性能も2倍にしなければならない。
では、冷却性能を2倍にするには、具体的に何をすればよいのか。
ここで重要になるのが、伝熱の基本式である。
Q = h × A × ΔT
Q:熱量(W)/ h:熱伝達率(W/m²K)/ A:放熱面積(m²)/ ΔT:温度差(K)
この式が示す通り、冷却性能(Q)を上げるには、h(熱伝達率)を上げるか、A(放熱面積)を増やすか、ΔT(温度差)を大きくするか、この三つのアプローチしかない。
■ 冷却性能を2倍にする方法案
方法①:放熱面積を増やす(フィンを増やす・大きくする)
最もシンプルな方法は、ヒートシンク自体を大きくすることだ。フィンの枚数を増やす、フィンを長くする、あるいはヒートシンク全体のサイズを拡大することで放熱面積Aが増え、冷却性能が向上する。ただし、製品のスペースに制約がある場合は限界がある。
方法②:熱伝達率を上げる(風速を上げる・強制空冷化)
自然対流(空気が自然に動く冷却)から、ファンを使った強制空冷に切り替えることで、熱伝達率hを大幅に高めることができる。同じ面積でも、風を当てることで冷却性能は数倍に向上する。すでに強制空冷の場合は、ファンの風量・風速を上げることが有効だ。
方法③:フィン形状を最適化する(ピンフィン・コルゲートフィン)
フィンの形状を工夫することでも、同じサイズで放熱性能を高めることができる。板状フィンからピンフィン(細い柱状のフィン)やコルゲートフィン(波形フィン)に変えることで、表面積と空気の乱流効果を同時に高めることができる。
方法④:熱伝導率の高い材料に変える
ヒートシンクの素材をアルミから銅に変えると、熱伝導率が約2倍になる。素子からヒートシンク全体へ熱を素早く広げることで、フィン全体を有効に使えるようになり、冷却性能が向上する。ただし、銅はアルミより重く高価なため、コストとのバランスを考慮する必要がある。
方法⑤:ヒートパイプを組み合わせる
ヒートパイプは、内部の液体が気化・液化を繰り返すことで熱を素早く輸送する部品である。素子から離れた場所に放熱部を設けることができるため、スペースの制約がある製品に有効だ。ノートパソコンの冷却でよく使われている技術である。
方法⑥:水冷(液冷)に切り替える
空冷では限界がある場合、水冷システムへの切り替えが有効だ。水は空気に比べて熱伝導率・熱容量ともに大幅に高く、同じ体積でより多くの熱を運ぶことができる。データセンターや高性能パソコンで普及が進んでいる冷却方式である。
■ どの方法を選ぶべきか
上記の方法は、それぞれ一長一短がある。製品のサイズ・コスト・使用環境・量産性など、様々な条件を踏まえたうえで最適な組み合わせを選ぶことが重要だ。
| 方法 | 効果 | コスト | スペース |
|---|---|---|---|
| 放熱面積を増やす | ◎ | 低 | 要スペース |
| 強制空冷・風速アップ | ◎ | 中 | ファン必要 |
| フィン形状最適化 | ○ | 中 | 省スペース |
| 高熱伝導材料(銅) | ○ | 高 | 変わらず |
| ヒートパイプ | ◎ | 中~高 | 柔軟 |
| 水冷 | ◎◎ | 高 | システム必要 |
実際の設計現場では、「まず計算で性能を見積もり、試作で検証する」というプロセスが基本となる。感覚や経験だけに頼らず、伝熱計算によって事前に方向性を絞り込むことが、開発の手戻りを減らす近道である。
■ 熱マネジメントは「後回し」にできない
製品開発の現場では、熱の問題が後から発覚して設計を大幅に見直すケースが少なくない。発熱量が増える傾向にある現代の製品開発において、熱マネジメントは設計の初期段階から考慮すべき重要テーマである。
「うちの製品が熱くて困っている」「性能アップしたら熱の問題が出てきた」という中小製造業様のご相談を、ぜひお気軽にお寄せいただきたい。
