おてつたびの勧め―元サラリーマンが知った、働きながら旅する新しい生き方
フリーランスになって気づいたことがある。時間の使い方が、根本から変わったということだ。
会社員時代は「有給をやりくりして旅行する」のが当たり前だった。しかし個人事業主になると、スケジュールは自分で決められる。その自由をどう活かすか、最初はむしろ戸惑いもあった。そんな中で出会ったのが「おてつたび」という体験だった。
■ おてつたびとは?
おてつたびとは、人手不足の地域の旅館・農家・施設などで短期アルバイトをしながら、その土地を旅するサービスである。仕事をしながら旅をする、いわば「働く旅」だ。ここ2年で4回経験したので、その内容を紹介したい。
- 高級貸別荘の清掃業 × 京都北部の旅
- キャンプ場のログハウス清掃 × 三重南部の旅
- 温泉ホテルの中居業 × 三重北部の旅
- ホテル客室清掃 × 伊豆温泉の旅
■ 仕事について―意外な適性と、新しい発見
正直に言うと、清掃の仕事は最初から志望していたわけではない。ただ、やってみると想像以上に奥が深かった。
仕事の内容はいずれも、現地の社員さんに教えていただきながら進めるもので、特別なスキルは不要だった。体力的な負担も想定の範囲内で、50代の自分でも十分こなすことができた。
そして何より驚いたのが、清掃が「キレイになる喜び」を感じられる仕事だったことだ。汚れていた場所がみるみる整っていく達成感は、ものづくりの現場で感じてきた「形になる喜び」と、どこか似ている。
この経験がきっかけで、今では毎週末の自宅の水回り掃除を、妻に代わって自分が担当するようになった。我ながら予想外の変化である。
また、10年先のことを考えると、体力に大きく依存せずに続けられる仕事が、まだあることを知れた。個人事業主として技術コンサルをメインに据えながらも、こういう選択肢を持っておくことは、精神的な余裕にもつながると感じている。
■ 旅について―地元の人だけが知る、本物の情報
おてつたびの醍醐味のもう一つは、観光ガイドには載っていない情報を地元の社員さんから直接教えてもらえることだ。
「この時期ならここの温泉が空いていて良い」「地元民が行く食堂はここ」「このお土産は地元では定番」――そういった生きた情報をもとに動くと、旅の密度がまったく変わる。4回のおてつたびはいずれも初めて訪れる土地だったが、それぞれ地元ならではの食事や景色を存分に楽しむことができた。
効率的に、かつ深く旅できるのがおてつたびの魅力である。
■ 人との出会い―夕食・宅飲みで聞いた、それぞれの人生
もっとも印象に残っているのは、仕事終わりのおてつたび仲間との時間だ。
おてつたびには様々な参加者がいる。若さあふれる20代、日本一周している同年代、リタイアされた70代などや、自分のように独立後の新しい体験として来ている方。属性も年齢もバラバラな人たちが、夕食や宅飲みを囲んで、それぞれの人生を語り合う。
会社という組織の中にいると、なかなか出会えない人たちだ。その会話の中に、自分が歩んできたこととは違う選択肢がいくつもあって、「こんな生き方もあるのか」と気づかされることが多かった。
■ サラリーマンから個人事業主へ転身した方へ
独立直後は、自由な時間をどう使えばいいか迷うこともあると思う。かつての自分もそうだった。
おてつたびは、そのヒントの一つになるかもしれない。旅と仕事と人との出会いが同時に得られて、費用も抑えられる。何より「自分はまだ新しいことに飛び込める」という手応えが、フリーランス生活の自信にもつながった。
これからも年に1回はチャレンジしていくつもりである。次はどの土地に行こうか、どんな出会いがあるか、今から楽しみにしている。
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